健康経営が注目される理由
健康経営が注目される理由として、近年働く世代の継続的な減少による労働市場の超売り手化があり、新規社員の獲得など雇用問題が深刻化してきています。そんな中、就活生の半数近くが健康に配慮した企業を求めており、その割合は今後も増えていくと予想されます。企業にとっては働き方改革などの推進と合わせて健康経営の見える化とも言える健康経営優良法人の認定取得する動きが高まっています。
▼データで見る健康経営優良法人が注目される理由
健康経営優良法人に認定された中小企業は2017~2020年で
約15倍に増加
認定初年度となる2017年に健康経営優良法人として認定されたのは318法人。これだけでも注目度の高さが伺えますが、翌年の2018年度には776法人が認定されました。そして2019年には2,503、2020年には4,723もの中小企業が健康経営に取り組む優良法人として認定を受けたのです。
わずか4年で認定企業数が約15倍にも増加したことになります。
健康経営優良法人に認定されるための5つの基準
1.経営理念・方針(経営者の自覚)
健康宣言書の掲示など、経営者が従業員の健康管理に取り組むことを明文化し、その文書などを組織の内外に発信することなどが求められます。
2.組織体制
工場、店舗などすべての事業場に従業員の健康管理の担当者を設置するすることが求められます。基本的に事業場間の担当者の兼務は認められません。
3.制度・施策実行
生活習慣病の予防対策やメンタルへルス対策など、16の項目のうち一定基準を満たすことが求められます。具体的な内容としては、
・定期検診受診率100%
・受診勧奨の取り組み
・50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施などがあります。
健康経営優良法人が注目される理由
今日の企業は、現代の日本が持つ様々な要因によって健康経営へのシフトを余儀なく迫られています。
日本の人口は右肩下がりを続けており、特に現役世代の人口減少が顕著です。出生数が減少している以上、この傾向はどのような経済予測よりも確実なものだと言えるでしょう。人手不足・人材不足は企業にとって逃れられない問題となるのです。
労働市場の売り手市場化は既に始まっています。2010年代に入ってから有効求人倍率は右肩上がりを続け、近年では軒並み1倍を上回っている状況です。ますます働き手の争奪戦が激化していくと同時に、在籍している従業員は一層手放せない存在となるでしょう。
これからは、従業員はかけがえのない貴重な財産だという認識をより強化していく必要があるといえます。
少子化によって新卒の数は確実に減少していく一方、企業の未来を担う若手社員の確保は普遍の経営課題です。
経済産業省が2016年に就活生の対してどのような企業に入りたいか調査したところ、健康に配慮した企業かどうかを非常に重視する傾向が見られました。
超売り手市場に突入しつつある現在において、健康に配慮した経営を行っているか否かは若い人材の確保の成否を分かつ要素となっているのです。
これは、ネームバリューや企業規模、給与水準で中小企業に勝る大規模企業であっても、健康経営を打ち出さなければ就活生にとって魅力的な企業となり得ない可能性があるということ意味しています。
少子高齢社会は、従業員の高齢化にも拍車をかけています。
総務省の調査によると労働力人口の平均年齢は年々上昇しており、2015年には45歳を超えています。このような従業員の高齢化で懸念されるのが健康リスクの問題です。
健康経営を話題にする際、よく出てくる言葉に「プレゼンティズム」というものがあります。これは、出勤はしているものの健康に問題があるために、仕事で十分なパフォーマンスが発揮できない状態を指す言葉です。日本語では「疾病就業」とも呼ばれます。
当然ですが個人のパフォーマンスの低下は組織全体の生産性に影響します。それが事業の中核をなすベテラン社員であれば尚更でしょう。従業員の高齢化が進めばその影響はますます大きくなっていくと予測されます。
体調の悪化や疾病の発症が明確な形で出れば、従業員が休暇を取るなどすることで健康上の問題が明確化し、対策を打ちやすくなるかもしれません。しかしプレゼンティズムの場合、従業員はとりあえず仕事をこなせている状態であるため、健康状態の悪化によって生産性が低下していることに気付きにくいのです。本人の能力的な問題と捉えられる可能性さえあります。
限られた人的資本をフルに活用できない状態は経営において大きな損失です。充実して仕事ができないことは個人のメンタルにおいても悪影響を及ぼしかねません。それがさらに生産性の低下を伴う悪循環に陥ることも十分考えられます。
したがって、従業員の健康保持・増進を促し、問題があれば速やかに発見し対応できるような仕組み作りが企業の生産性向上において重要となるのです。